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美容室独立ノウハウ美容室経営で創業融資に含まれる運転資金の考え方について
美容室の開業のため融資を受けたいと考えたとき、「運転資金を創業融資に含めてもいいの?」「どうすれば融資の審査を通りやすくなる?」と考えている方も多いかもしれません。
結論から言えば、創業資金に運転資金を組み込むことは問題ありませんが、いくつか注意しなければならない点があります。
この記事では、創業融資に含まれる運転資金の考え方や、融資を受けるときに必要な事業計画書についてまとめてみました。
創業融資に運転資金を含めてもいいのか
「運転資金」とは、経営をするために欠かせない資金全般のことです。
具体的には仕入費や事務所(店舗)費用はもちろんのこと、インターネットや電話の通信費、光熱費など恒常的に発生する費用の大半が該当します。
創業融資を借り入れる際、そこに運転資金を組み込むことは問題ありません。
ただ、設備資金よりも融資審査や条件が厳しいケースがあるので注意が必要です。
運転資金には種類がある
運転資金は大きく、下記の5つに分けられます。
経営運転資金 | 事業運営をする上で必要な資金のことでテナント費用や人件費などの支出に充てられる資金。【売掛金+棚卸資産-買掛金】の計算式で算出されます。 |
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増加運転資金 | 売上が増加しその売上が回収できるまでの間に必要な資金のこと。黒字倒産を防ぐ上で十分に確保しておきたい資金。 |
減少運転資金 | 売り上げが減少していることで必要になる資金のことで人件費や仕入れなどに使われる繋ぎ的な役割です。業績悪化傾向の際の融資となりリスクがあるため融資が受けにくくなる可能性があります。 |
季節性運転資金 | 賞与時期や繁忙期など特定の時期に必要な資金のこと。ある程度決まった時期に必要になるため金融機関との繋がりを作りやすい資金ともいえます。 |
設備未払金決済運転資金 | 設備導入から半年を過ぎた後購入した資金が不足するような場合に必要な資金のこと。計画外の運用となり金融機関の印象が悪くなるためその後の融資審査が厳しくなる可能性は否定できません。 |
それぞれに特徴があるため、資金の内訳を理解した上でどう使っていくのか考えるようにしましょう
運転資金の融資には事業計画書の作成が重要
日本政策金融公庫や銀行などの民間金融機関から、運転資金の融資を受ける際に必ず必要になるのが事業計画書です。
事業計画書には具体的な事業内容など重要な情報が記載されるため、融資するか否かを判断する際に重要な書類となります。
事業計画書について、詳しくみていきましょう。
事業計画書とは
事業計画書とは、事業運営における具体的な計画を示す重要な書類のことです。
創業にあたって思い描いている計画や展望、売上目標などを可視化し、方向性を示すことで資金提供者からの信頼を獲得するのが目的となります。
事業計画書だけが融資の判断材料となるわけではありませんが、具体的な事業計画書を作ることで「事業の目的」や「事業によって得られること」をアピールでき、説得力を与えられるでしょう。
また、審査期間短縮や審査合格の可能性を高める上でも事業計画書は効果的であることから、より具体的で整合性のある事業計画書を作成することが大切です。
事業計画書に記載する主な事項
事業計画書の主な記載事項として次の5項目があげられ、それぞれが具体的かつ一貫性を持っていることが重要です。
- 企業概要:商号・住所連絡先・ホームページ・代表者情報など企業の概要
- 事業概要:誰に何をどのように提供するかなど具体的な事業概要やコンセプト
- 従業員(雇用)について:想定人数など雇用、人員計画や体制について
- 競合店などの周辺環境について:競合店など環境面の分析を行い自店の強みを明確にする
- 財務計画:売上・利益、資金調達についての計画
事業計画書の作成時は全体の整合性を確かめながら、わかりやすく作成するように心がけてください。
事業計画に沿った必要経費を把握しよう
作成した事業計画をもとに、必要経費を把握しておくことも大切です。必要経費としては主に次のような項目が挙げられます。
運転資金 | 家賃や光熱費、カラー材など事業を行う上で必要不可欠な費用 |
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内外装の工事費 | 店舗のデザイン、空調や証明、看板などにかかる費用 |
テナント賃貸費用 | 保証金や仲介手数料、前払い賃料など |
機械・什器・備品 | シャンプー台や鏡、椅子など |
このうち、運転資金については3ヶ月分を用意しておくように心がけましょう。(例:月の固定費が50万円であった場合は、運転資金として150万円以上用意しておく)
また、内外装工事費は坪単価30万円から50万円が相場とされているため、見積もりを出した時点で相場よりも極端に低い(高い)場合には注意が必要です。
なお、テナント賃貸費用は、テナントの大きさなど物件によって違いますが、ここでは家賃が10万円であった場合の一例を載せてみました。
費目 | 内訳 | 料金 |
---|---|---|
保証金(敷金) | 10ヶ月分 | ¥1,000,000 |
礼金 | 1ヶ月分 | ¥100,000 |
仲介手数料 | 1ヶ月分 | ¥100,000 |
前払い賃料 | 2ヶ月分 | ¥200,000 |
上記の例でいえば、テナント賃貸費用で140万円が必要な計算となり、それなりの金額になることがわかります。
そして、ここまでで紹介した必要経費以外にも機材の故障を始めとし、予期せぬ出費が予想されることから、そうした臨時費用についても計画的に貯めておくことが大切です。
自己資金が少ない場合の運転資金の考え方
自己資金が少ない状態では、そもそも創業融資を受けられない可能性があることも抑えておきましょう。
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」では、一定の条件を除き創業融資総額の1/10以上の自己資金が必要とされています。どうしても自己資金が足りない場合、以下のような手段で増やすことも可能です。
1.みなし自己資金 | すでに支払った事業のための資金は自己資金に含められる |
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2.現物出資 | 総額5,000,000円以内のパソコンや車などを事業用とする場合、資本金として澪められる。ただし法人設立時のみ可能。 |
3.出資者を増やす | 法人の場合、出資者を増やし役員として共に働くことを前提に共同創業とすれば資金を増やすことが可能。 |
とはいえ、いずれの方法においてもあまり現実的なものではなく、基本的には開業前にしっかりと自己資金を貯めておくようにしましょう。(事業規模を見直し、そもそもの自己資金額を削減するのもひとつの手)
創業融資検討時は税理士に相談しよう
開業時の創業融資について見てきましたが、創業融資を受ける際は運転資金の検討をはじめ、事業計画書の作成といった慣れない作業を多くこなさなければなりません。
開業準備と並行して融資の準備を進めることは、そう簡単なことではないでしょう。
そのため、開業時の負担を減らす上でもプロである税理士にまず相談することをおすすめします。
税理士に相談することで、開業資金を獲得するために必要な一連の流れについて教えてくれることはもちろん、事業計画書の書き方についてもサポートをしてくれるでしょう。
余計な手間をかけず、開業に向けてスムーズに事を進めていくうえでも、まずは一度税理士のサポートを受けることを検討してみてはいかがでしょうか。