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美容室独立ノウハウ

最終更新日:2022/01/06

美容室開業の融資に日本政策金融公庫が選ばれる理由とは?

開業融資で申込みに行くのはまず日本政策金融公庫と言われるほど人気のある日本公庫ですが、その理由はどこにあるのでしょうか?また起業分野でも許認可が必要でやや特殊なジャンルに属する美容室の開業でも、その融資申込先に日本公庫が選ばれる理由とは?

今回は、美容室開業の融資に日本政策金融公庫が選ばれる理由について、日本公庫の金融機関としての機能や役割、開業資金融資先として申込者から真っ先に選ばれる理由など詳しく解説します。

また合わせて、日本公庫の新規開業資金と他の金融機関の融資商品とも比較します。

筆者情報

QANAETE融資コンテンツ担当・nobu-shige

地方銀行で30年勤めた元銀行員。銀行員時代は基幹店舗での勤務歴が長く、営業畑中心に事業融資から個人ローンまで幅広く融資経験を持っています。また銀行から新規企業融資開拓チームにも選ばれ中小企業融資の最先端で仕事をしてきました。本店での勤務もあるので労務問題や福利諸制度も詳しいです。銀行員時代に培った経験と知恵を盛り込んだ読者に役立つ記事を提供します。

なぜ日本政策金融公庫が選ばれるのか

美容室の開業融資を受ける際、なぜ日本政策金融公庫が選ばれるのでしょうか?その理由は簡単です。日本公庫は政府系金融機関として事業者の創業融資に積極的でかつ融資実績も多いからです。

一方銀行など民間金融機関は、事業実績なく信用のない新規開業者に対して融資は消極的で、よほどの理由がない限り、資金申込みに応じてくれません。

その点、日本政策金融公庫は、固定の低金利かつ長期の融資が無担保・無保証で借りられるため開業融資希望者にはありがたい存在です。

また前職が美容師だった方が開業資金を借入れする場合、職業柄、借り手が女性、若者となるケースもありますが、公庫はそのような対象者にも制度を用意して融資を積極的に行っています。

そのような様々な理由から公庫が開業融資の最初の申込先に選ばれることが多いのです。

日本政策金融公庫とは

そもそも日本政策金融公庫とはどのような組織なのでしょうか?日本公庫は財務省が所管する100%政府出資の政策金融機関で、銀行など民間金融機関の業務を補完しつつ、経済振興、国民生活の向上を目的として活動しています。

そのため融資対象も、事業実績のある企業・個人事業主だけでなく、これから事業を開始しようとする起業者、景気変動の影響や大規模災害で事業継続が困難になっている企業・零細事業者にも融資を通じて幅広く支援しています。

さらにそれだけでなく、一定期間、子供の教育資金が必要な個人に対しても低金利長期の国の教育ローンを通じて資金サポートしているのも日本公庫です。

そのほか日本公庫は、全国各地にある信用保証協会の銀行等の融資に対する保証行為に対して保険行為を行い(再保険)、保証協会の業務の円滑化をサポートしています。

このように日本政策金融公庫は国民生活のあらゆる場面に登場して、企業活動や国民の生活を支援しているのです。

日本政策金融公庫を選ぶメリット

それでは、美容室開業に当たり、創業融資で日本政策金融公庫を選ぶメリットは何なのでしょうか、具体的に4つの項目で説明します。

開業資金融資に積極的である

なんと言っても公庫は開業資金融資に積極的であるという点がその理由に上げられます。公庫の役割は融資業務を通じて雇用の創出に貢献することもあるので、それに結びつく開業資金融資に積極的なのは当然の行為なのです。

創業融資の場合、美容室の開業前から資金が借りられる

美容室は開業前に保健所から営業許可証をとらないと営業できない特殊な職業です。

一方銀行等から融資を受けるときには、許認可業種は必ず営業許可証を事前に銀行に提示しなければ融資が受けられないルールになっています。

そのため美容室が銀行等から融資を受けるには、前提として、一時的でも自分で資金を用意して内外装工事、美容機器等を整え、保健所に申請して営業許可証をとる必要があります。

ところが全ての美容室開業者がその手続きができるほど自己資金が豊かでないのが実態です。

その点、日本公庫の融資は、営業開始前、あるいは営業許可証取得前でも借りられるので、許可証取得のため多額の自己資金をわざわざ用意する必要性もありません。むしろ開業資金融資を受けてその資金を、一部営業許可を取るための準備に充てることもできます。

銀行等の融資に比べて貸出金利が低い

これは公的融資機関一般に言えることですが、銀行等の民間金融機関の融資金利に比べて日本公庫の融資金利は低いです。特に事業開始時点で不安定要因の多い新規事業者には、金利が低いと支払利息が少なくなる分、それだけでも十分大きなメリットになります。

無担保、無保証で融資が借りられる制度がある

日本公庫では、美容室開業融資を借りるに当たり、無担保、無保証で借りられる制度があるのでとても重宝します。(ただし融資金額には上限があります)

また自己資金も、通常融資では総調達額の3割程度求められることが多いのですが、この制度融資では、自己資金は総調達額の10分の1程度あればいいので、資金の調達に悩む開業者にはメリットです。

他の融資商品との比較

この章では日本政策金融公庫の融資と他の融資商品(信用保証協会付き融資・プロパー融資)と比較します。比較することで公庫の融資をより深く理解できるようになります。

信用保証協会付き融資、プロパー融資の違い

信用保証協会とは、信用保証協会法に基づき作られた公的機関で2020年1月現在、全国に51箇所設置されています。

またその設置目的は、信用力に乏しい中小企業・小規模事業者が銀行等、民間金融機関から融資を受けるとき、信用保証協会が事業者の保証をすることで資金調達が円滑に行くよう支援することです。

一般的にこの形態による融資を保証協会付き融資と呼びます。もちろん実際に融資を行うのは申込みを受けた銀行や信用金庫です。

一方、銀行・信用金庫等が自社の責任の下に直接事業者に融資を行うタイプをプロパー融資と呼びます。

保証協会付き融資とプロパー融資、このふたつの融資の間にはどのような違いがあるのでしょうか?

これまでは、事業者から融資を申込まれると、民間金融機関は事業者の履歴や財務状況、取引具合等を審査して、プロパー融資で対応するか、信用保証協会付き融資で対応するかを決めてきました。

ただし新規の融資申込みがあったときには、多くの金融機関でまず信用保証協会付きで対応することが一般的でした。

しかし信用保証協会付きで対応すると、事業者は信用保証協会に対して融資金利と別に保証料を支払う必要があります。それがプロパー融資(支払は金利のみ)に比べると、信用保証協会付き融資のデメリットのひとつだったのです。

一方、保証を受けることで信用力の乏しい事業者でも融資を受けられるので、全部をデメリットだと言い切るのも難しい点があります。プロパー融資だと一挙に審査ハードルが上がるので、この点では保証料は事業者の信用を補完するコストとも言えます。

日本政策金融公庫との違い

日本政策金融公庫と信用保証協会の違いは、両者とも同じ公的機関ですが、信用保証協会は事業者の融資に対して保証を行うのに対して、日本政策金融公庫は申込者に対して直接融資を行っている点です。

しかも日本公庫の融資に対しては、別途保証機関を付ける必要もないことから、事業者は保証料を支払う必要もありません。

この点が両者の大きな違いです。一般的に信用保証協会付き融資を借りると、保証料だけで2%程度掛るので、その差は大きいと言えます。

ただし日本公庫の融資を受けられるかどうかは審査の結果決まるので、日本公庫に融資申込みするか、銀行等で信用保証協会付き融資を申込みするかは、あくまで自社の信用状態を考慮して決める必要があります。

一方銀行等のプロパー融資は事業実績が一定期間ある事業者が受けられる融資なので、新規に美容室を開業しようとする起業者では信用不足と判断され、最初からプロパー融資を受けることは難しいと考えて下さい。

美容室開業者が日本政策金融公庫と信用保証協会付き融資を同時申込みできるか?

ところで各信用保証協会でも保証制度の中で新規開業資金への対応を行っています。その場合、美容室開業者が創業融資を日本政策金融公庫と信用保証協会に同時申し込みすることはできるのでしょうか?

結論から先に述べればそれはできます。申込みに関しては特に問題や制約はありません。

ただし申込みで審査書類を出すとき、公庫と保証協会にそれぞれ創業計画書を出す必要がありますが、できれば同じ創業計画書を使って審査を受けたほうが効率的ですし、それが忙しい開業者には合理的な行動です。

さらにうまく審査に通れば、どちらも公的機関なので、固定、低金利かつ長期の融資が受けられて美容室開業者には大きなメリットになります。

また開業の機会を通じて保証協会付き融資を借りておくと、その借入れ実績や返済実績を踏まえ、将来銀行等のプロパー融資が受けられるきっかけにもなります。

ただし開業予定者が日本公庫の創業融資、保証協会付き融資が同時に借りられるとは断言できないので、あくまで美容室の開業融資の申込みでは、最初に日本政策金融公庫、次に信用保証協会と優先順位を付けて申込みすることを心がけて下さい。

まとめ

どうして美容室開業の融資先に日本政策金融公庫が選ばれるのか、その理由を公庫の役割や機能を説明しながら多角的に解説してきました。

美容室の開業含む多くの起業者にとって、創業資金が借りられる日本政策金融公庫はなくてはならない存在だと筆者も考えています。

この記事を通じて日本政策金融公庫の創業融資の有用性・利便性を身近に感じてもらえたら幸いです。